地球の引力

目次

トップページへ戻る

概要

地表で生活する我々が感じる地球からの引力(重力)は、地球の自転により生じる遠心力と、万有引力の合力です。地球の自転が少々早くなったり遅くなったりしたらどの程度感じる引力が変わるのかを軽く考えてみました。重力というのはやや曖昧な言葉なのですが、ここではこの遠心力と万有引力の差分という意味で使います。恐竜博でのボル箱さん(@nasubimofumofu)の「昔は重力が小さかったのか」という発言がきっかけです。

直感的理解

遠心力は回転半径が大きいほど大きいですね。極点で遠心力は最小値0をとり、赤道上で最大値をとるはずです(赤道で最も標高が高いところで最大?)。極点と赤道上の重力の違いを調べてみれば、遠心力が重力にどれほど影響を与えるかがわかりますね。この時点で多分そんなに影響なさそうだとわかりますね。地球上で場所により重力が大幅に違うなんて聞いたことない!

重力の緯度依存性

さて、質量1 kgの物体に作用する重力の強さはを重力加速度と呼びます。ここでは重力加速度を\(g\) と表します。重力は質量に比例するので質量\(m\) kg の物体にかかる重力は\(mg\) です。この\(g\) の値は様々な場所で精密に(有効数字7桁とか8桁とかくらいかな?)で測られています。理科年表にも乗っているので興味がある人は見てみましょう。

Wikipediaの重力のページを見てみると

ジオイド上(標高0)の重力加速度は、赤道上では 9.7799 m/s2 と最も小さくなり、北極、南極の極地では 9.83 m/s2 と最も大きくなる。赤道と極地との差の主な理由は自転による遠心力であるが、自転以外にも地殻の岩盤の厚さ、種類、地球中心からの距離などによる影響も若干受ける。このため、重力を精密に測定し、標準的な重力と比較することで地殻の構造を推定することができる。測定手法には絶対重力測定と相対重力測定があり、日本では国土地理院が日本重力基準網として基準重力点を設定している。 国際度量衡会議では、定数として使える標準重力加速度の値を \(g\) = 9.80665 m/s2 と定義している。

と書いてありました。

赤道上では遠心力によって1%ほど重力が小さいわけですね。 つまり1日が24時間であろうが20時間であろうが、自転の影響が一番大きい赤道上でも影響は相当小さそうです。地球の自転がどれ程変化しているかはあまり詳しくないのですが、例えば、このサイト(地球の自転は一定か? from 理科ねっとわーく) によると昔は速かったらしいですね(ヒトの体内時計の周期は約25時間と聞いたことがあるので単純に昔は遅かったのかと思っていました)。

ところで、極点の有効数字が少ないのはやっぱり測るの大変だからなのだろうか。そしてこの情報に出典が書いてないので少し疑わしい…。

計算

まあ答えはだいたいわかったのですが、自分で計算してみましょう。 必要なのは万有引力の公式、遠心力の公式、余弦定理です。つまりだいたい高2までの物理と数学の知識ですね。まあ細かいこと言うと地球は球じゃないし山とかあるけど、とりあえずは気にせず球体と近似して計算してみましょう。 地球の質量を\(M\) 自転の角速度を\(\omega\) 地球の半径を\(R\) とすると、 地表ある質量\(m\) の物体が感じる引力\(F\) は、地球の表面に固定した座標系を考えると、

\begin{align} F=\sqrt{F_G^2 + F_C^2 - 2 F_G F_C \cos(\theta)} \end{align}

ただし、\(F_G\) は万有引力、\(F_C\) は遠心力で、

\begin{equation} F_G=G\frac{Mm}{R^2} \\ F_C=m(R\cos\theta)\omega^2 \end{equation}

\(\theta\) は緯度です。余弦定理を使って合力を計算しているだけです。Wikipediaの重力のページ中の地球における、重力のイメージを参照して下さい。 したがって、

\begin{align} F&=m\sqrt{\left(G\frac{M}{R^2}\right)^2 + \left(\omega^2 R\cos\theta\right)^2 - 2\frac{GM}{R}\omega^2\cos^2\theta}\\ &=m\sqrt{\left(G\frac{M}{R^2}\right)^2 - \omega^2 \left(2\frac{GM}{R} - \omega^2 R^2 \right)\cos^2\theta} \end{align}

あとは必要な値を代入して計算すれば引力の大きさがわかります。 ためしに現在の地球の引力を有効数字は4桁で計算してみました。 地球半径として赤道での値を用いました。

\begin{equation} \begin{aligned} G &=6.67384 × 10^{-11}\ \mathrm{m}^3\mathrm{kg}^{-1}\mathrm{s}^{-2}\\ M & =5.972 × 10^{24}\ \mathrm{kg}\\ R &=6378\times 10^3\ \mathrm{m}\\ \omega &=\frac{2\pi}{T}=7.272×10^{-5}\ \mathrm{rad/s} \end{aligned} \end{equation}

ただし\(T\) として現在の1日

\begin{equation} T=24\times 60\times 60=86400\ \mathrm{s} \end{equation}

を用いました。すると、

\begin{align} F&=m\sqrt{(9.797)^2 - 0.6597\cos^2\theta}\\ \end{align}

よって

\begin{align} &F(\theta=0)=9.797m \mathrm{m/s^2} \\ &F\left(\theta=\frac{\pi}{2}\right)= 9.764m\ \mathrm{m/s^2} \end{align}

Wikipediaによると、実測値は赤道上では 9.7799 m/s2、極地では 9.83 m/s2だったので、少し小さめの値になっていますね(計算あってるか不安)。理由はを考えてみるのもおもしろいでしょう。

地球質量の経時変化

ちなみに、地球質量は毎年5万トンずつ軽くなっているそうです。昔も同じように変化していたかはわかりませんが、もし単調に減っていたとしたら昔は重力が大きかったのかもしれませんね。とはいっても、5万トン(\(=5\times 10^{7}\) kg)は、地球の質量の\(5.972\times 10^{24}\) kg に比べると小さすぎるのでこの変化が1億年(108 年)つづいても大したことはなさそうです。

更新履歴

  • 2018-03-19 (Mon) 初版
  • 2021-10-13 (Wed) 数式の表示を Mathjax3 に変更し、数式番号を削除

著者: ril

Created: 2021-10-13 Wed 23:46

Validate

inserted by FC2 system