Ising model の平均場近似-特に反強磁性の場合
概要
強磁性Ising modelのは大抵の統計力学の教科書に記述があり、また、Web上に資料も豊富であるが、反強磁性についてはそうでもないので、ここにまとめた。
Ising modelのハミルトニアン
を考える。ただし、和 \(\langle i,j \rangle\) は、全ての、再近接格子についてだけとることとする。
\begin{equation} \sigma_i=\pm 1 \end{equation}このハミルトニアンは、 \(J\) が負のとき強磁性体の、 \(J\) が正の時反強磁性体のモデルとなる。ここから平衡状態における磁荷 \(m\) を求め、\(h-T\) の相図を求めたい。
副格子
さて、ここでは反強磁性体について考えたいので、副格子という概念を導入する。 副格子とは(中略)。 以下立法格子など、素直に副格子を導入できる形だけを考える。 2つに分けた格子をそれぞれA、Bとする。
平均場近似の導入
と書いて、平均値からのゆらぎ \(\delta m_i^X\) を微小量と考えて、その2乗を0とする近似である。 ただし、
\begin{align} m^X&:=\langle \sigma_i^X \rangle \\ \delta m_i^X&:=\sigma_i^X - \langle \sigma_i^X \rangle \end{align}と定義する。
平均場近似したハミルトニアン \(\mathcal{H}_{MF}\) は、
\begin{align} \mathcal{H}&=J \sum_{\langle A,B \rangle} \sigma_i^A \sigma_j^B - h \sum_i^N (\sigma_i^A+ \sigma_i^B)\\ &=J \sum_{\langle A,B \rangle}(m^A + \delta m_i^A)(m^B + \delta m_j^B) -h \left[\sum_{i=1}^{N/2} (m^A + \delta m_i^A) + \sum_{i=1}^{N/2} (m^B + \delta m_i^B)\right]\\ &=\left({\frac{\beta Jz}{2}m^A m^B N}\right) +(Jzm^A-h)\sum_{i=1}^{N/2} \sigma_i^B +(Jzm^B-h)\sum_{i=1}^{N/2}\sigma_i^A +O(\delta m_i^A \delta m_i^B) \end{align}分配関数の計算
なお、当然のことながら、\(A=B\) のときは、よく知られた、普通の Ising model 平均場近似の分配関数と一致する。
平均磁荷の計算
ここでは2通りのやり方で導いてみる。
自由エネルギー最小
分配関数 \(Z_{MF}\) からヘルムホルツの自由エネルギー \(F\) を計算できる。 そこから\(F\) の最小を与える 磁荷 \(m\) を求めればよい。
これを\(m^A\) で微分すると
平衡状態では
\begin{align} \frac{\partial F}{\partial m^A}=0 \end{align}であるから
\begin{align} -\frac{Jz}{2} m^B N - \frac{Jz}{2}N \tanh[-\beta(Jzm^A-h)]&=0\\ \tanh[\beta(Jzm^A-h)]&=m^B \end{align}同様にして
\begin{align} \frac{\partial F}{\partial m^B} &=-\frac{Jz}{2} m^A N - \frac{Jz}{2}N \tanh[-\beta(Jzm^B-h)]=0 \end{align}より
\begin{align} \tanh[\beta(Jzm^B-h)]&=m^A \end{align}ここで 各副格子 A, B の磁化は、平均的には逆向き、かつ、同じ大きさを保つと仮定すると \(m^A=-m^B\) と置けるので単純に
となり、この条件は強磁性体のIsingモデルで\(J\) を \(-J\) と置き換えたものと一致する。
自己無撞着方程式
磁荷 \(m\) の満たすべき自己無撞着方程式を求めそこから \(m\) を計算する。 磁荷は
で与えられるので、ここに\(m\) を含む \(Z\) の表式を代入すれば自己無撞着方程式が得られる。 代入して計算すると、
あれ、得られない。\(m^A\) と \(m^B\) それぞれについての自己無撞着方程式か、 \(m=m^A+m^B, \mu=m^A-m^B\) それぞれについての自己無撞着方程式を得ないと だめっぽい。しかし\(\mu\) と共役な場ってなんだろう。
相図
参考資料
- 豊田工業 神谷氏 統計力学(2012年5学期開講) 講義ノート宿題等 : 書き始めてから見つけた。かなり丁寧。
- Chap8 (pdf) : 8-2が反強磁性体
更新履歴
- 2012年くらいに書き始める。
- 2021-10-13 数式表示をMathJax3に変更